私は大手総合職を退職し旋盤工として働いています。使っている機械はNC旋盤がメインで、汎用旋盤も使います。最近はマシニングセンタも触ります。
本記事では知らない方にもわかりやすく、NC旋盤について解説しました!
これがNC旋盤!
画像はオークマのカタログより引用した、LB3000EXⅡのものです。
私が普段使っているNC旋盤も同じものです。
NC旋盤って何をする機械?
これがNC旋盤の加工動画です!
このように、金属の材料を回転させ、刃物をあてて削る機械です。
ちょうどろくろで粘土を成形する作業に似ています。
真横に向いたろくろで金属の材料を回転させ、刃物でけずりとっているイメージです。
外径・内径の単純な削り加工だけでなく、溝入れやねじ切りといった加工も可能です。
機械にもよりますがその加工精度は0.001mm単位で、とても精密な加工が可能です。
NC旋盤内部はどうなってるの?
ドアをあけたらどうなっているのでしょうか?

こちらはNC旋盤内部の画像。
どのNC旋盤でも中の構成は基本的に同じで、主軸・タレット・心押台の3つで構成されています。
それぞれについて軽く説明しておきます。
主軸
主軸はNC旋盤の要となる、材料を回転させる部分です。
主軸には基本的に画像のようなチャックが装備されており、これで材料を掴みます。
NC旋盤ではパワーチャック(油圧チャック)といい、油圧によって強力に爪を動かして材料を掴みます。
こちらがチャックでワークをつかんだ様子です。
画像のように3本の爪を油圧の力で締め込み、材料を固定します。
この状態で主軸を回転させ、材料を削っていきます。
タレット
タレットとは、刃物を取り付ける刃物台のことです。
タレットには工具を複数本取り付けることができます。
画像を見るとわかるように、タレットには番号が振ってあります。 これが工具番号で、画像のタレットのように1〜12までの12箇所に工具を取り付けられるものが一般的です。
これら12箇所にセットした工具のうち、用途に応じた番号のものを呼び出して使います。
汎用旋盤は基本的に4本しか刃物をつけられませんので、NC旋盤のタレットはとても優れた形状なんです。
ちなみに画像では4番の工具が呼び出された状態になっています!
心押台

心押台は細長い材料を支えるための装備です。通常画像のような円すい形の道具、心押しセンタを取り付けて使います。
動画のように、材料を心押しセンタで支えることで材料がたわんでしまうのを防ぐ役割があります。
支える仕組みとしては、材料に心押しセンタの先端と同じ形の穴をあけておき(心もみといいます)、そこに心押しセンタを押し当てているかたちです。
もし動画のような加工で心押台を使わなかったら、”びびり”と呼ばれる振動が発生し、表面が大変汚い状態になってしまいますし、加工精度も大きく落ちてしまいます。
びびりについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある方は読んでみてください!
金属なんて硬いものをどんな刃物で削っているの?
木なら刃物で削れるのも納得ですが、金属なんて硬いもの、どんな刃物で削っているのか不思議ですよね。
金属は、材料の金属よりも硬い金属を刃物にして削ります。
多くの場合は超硬(ちょうこう)というたいへん硬い金属を使って削ります。
他にもサーメットやハイスと呼ばれる金属がよく刃物に使われます。
機械はプログラムで動かす
NC旋盤のNCとは、Numeral Controlの略。数値制御という意味です。
言葉通り、数字をはじめとしたコードで司令したプログラムを使って動かします。
プログラムで機械を動かすことには様々なメリットがあります。
人の手では難しい動きも正確に行える
旋盤加工には、汎用機では大変な熟練が必要な加工が多くあります。
その例の一つが公差の入ったアール加工。つまり丸みを帯びた形状です。
汎用機では専用の刃物を用意するか、超熟練の機械操作技術が必要な加工です。
専用の刃物を用意しても多くの場合表面が汚くなってしまいます。
ですが、NC旋盤でプログラムを組めば、大抵のアールはいとも簡単に加工できてしまいます。
このように、人の手では難易度が高い加工も簡単に正確に行ってくれるメリットがあります。
繰り返しの加工が得意
プログラムを使った加工では、当然ですが一度行った動きを何度も再現することができます。
人の手で動かしていると多少の誤差が生まれるところが、NC機では完璧に同じ動作を繰り返すことができるわけです。
そのため、複数個の加工ではNC機の方が圧倒的に速く正確に加工を行うことができます。
機械を動かしている間、別の仕事ができる
プログラムを使った加工では、段取りを完璧に組めていれば始動ボタンを押すだけで勝手に加工が進みます。
そのため汎用機のように常に機械に人がついている必要がなく、加工を行っている間別の仕事ができます。
ミーリング機能のついたNC旋盤も
NC旋盤には、ミーリング機能という本来フライス盤・マシニングセンタで行う加工が行える機能がついたものがあります。
材料を回転させて削る旋削ではなく、工具を回転させて削る加工方法です。
ミーリングができる旋盤はもはや旋盤の枠を越えていますので、ターニングセンタとも呼ばれます。
NC旋盤の最終形態ともいえるターニングセンタの加工、動画を掲載していますのでぜひ御覧ください!
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