機械技術8月号は輸入機械・工具・治具がテーマです。
前回の記事では、ドイツのNC旋盤を紹介しましたが、引き続き今回は海外製のクランプ治具を紹介していきます!
ダフテールを使った5軸用バイス「V562X」(5th AXIS社)
まず紹介するのは、アメリカの5th AXIS社が販売する5軸MC用センタリングバイス「V 562X」です。
米国で主流のダフテール(アリ溝)を活用したクランプ方法
日本ではあまり馴染みがありませんが、5軸加工において米国ではダフテール(アリ溝)を活用したクランプ方法が主流です。
ダフテールとは木工等で古くからある、画像のような形状のこと。
これをバイスに応用することで、強力なクランプが可能になります。
バイス本体より大きいワークも安定してクランプ可能
「V562X」のクランプ力は25kN以上と大変大きく、ダフテールを併用することによって画像のようなバイスの大きさも越えるワークを安定して保持することが可能です。
5軸加工では5面、アンダーカットを含めると6面へのアクセスが求められるため、このようにワーク下面だけを使ってクランプすることには大きなメリットがあります。
ダフテールで片側2面、両面で計4面を拘束する
このバイスは、通常のバイスのように口金を締め込むことができる構造になっています。
そのため通常のバイスと同様に左右から2面を拘束するのと同時にバイス上面(ワーク下面)も口金につき1面、計2面拘束することになるため、全部で4面を拘束できるのが把握力が高まる理由です。
さらにバイス上面へはワークの自重による拘束力が働くのもクランプ力が高まるポイントですね。
5th AXIS社のYouTube動画
公式からYouTube動画が公開されていましたので紹介します。
ワークへのダフテールの作り方から活用事例まで解説されており、どのようなバイスかが大変わかりやすいです。
紫外線硬化式クランプシステム「ブルーフォトン」
次に紹介するクランプ方法は、なんと接着剤を使ったクランプ方法です。
販売しているのはアメリカ,ミシガン州のブルーフォトン社。
ただの接着剤ではなく、紫外線をあてて硬化させるタイプのものすごく強力な接着剤です。
アルミだけでなく、鋼材の荒加工もできてしまう強さがあります。
上の公式YouTube動画を見るとどんなものか分かりますので、ぜひご覧ください。
紫外線硬化式クランプシステム
ブルーフォトンの接着剤は、通常はゲル状ですが、紫外線をあてると硬化してくっつきます。
そして接着剤への紫外線照射を可能にしたのが画像のような紫外線透過率100%のサファイアガラスが貫通したグリッパです。
ブルーフォトンクランプシステム使用の流れ
1.接着剤を塗布 2.ワークを乗せる 3.紫外線をあてる 4.加工
グリッパに接着剤を塗り、ワークをセットした上で紫外線をこのグリッパを通して接着剤にあててやるだけで、強固にクランプすることができます。
クランプシステムの使用の流れはこちらの動画でも解説されています。
紫外線硬化式接着剤を使ったクランプのメリット
5軸加工機での加工に最適
紫外線硬化式保持システムでは1面で拘束できるため、5軸加工のようなワークの5面ないしは6面へのアクセスが必要な加工に向いています。
ひずまない
接着剤でのクランプですので、バイスのようにワークに圧力がかかりません。
そのため薄肉のものも難なくクランプできますし、クランプによるひずみも起こりません。
材質、形状を選ばない
例えば薄めのガラスのような圧力に弱い材質や、表面がガタガタで不安定な形状のワークでもクランプすることができます。
こんな重切削も可能!
こちらの動画は紫外線硬化式クランプシステムでチタンの重切削を行っている様子です。
接着剤でのクランプでありながらかなり負荷をかけて削っており、接着の強さが分かります。
旋盤加工も可能
驚いたのが旋盤加工も可能という点です。
旋盤加工では薄物などでワークに圧力をかけられない加工もあるため、その場合は治具を使ってクランプする必要があるのですが、この接着剤を使ったクランプも一つの選択肢になりそうです。
一つ心配なのは芯出しについてのこと。接着剤で芯出しが可能なのかは不明ですが、大切なポイントかと思います。
将来性のある新しい技術
紫外線硬化式クランプシステムは、2001年に初めて実用化された新しい技術です。
私としては今後さらに有名になる可能性がある、将来性のある技術だと考えています。
機械技術8月号は海外製の機械・工具・治具の特集で面白い!
本記事では雑誌「機械技術」8月号から2つのクランプ治具を紹介しました。
特に8月号は海外製の機械・工具・治具の特集で、日本にはない目新しいものが多く掲載されており、大変面白かったです。
おすすめの雑誌ですのでぜひ読んでみてください(^^
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