「フライス盤はほしいけど、置く場所や金額の問題でなかなか手が出ない。」そんな方にぴったりなのが卓上フライス盤です。
卓上フライス盤とは、その名の通り卓上に置けるほど小型のフライス盤のことです。用途や目的によっては、剛性の低さやストロークの短さを補って余りあるメリットを出すことができます。
本記事では、通常の卓上フライス盤からミニフライス盤、CNC卓上フライス盤、中古の卓上フライス盤など、卓上フライス盤について、現役で機械加工技術者として働く私が網羅的に解説しました!
卓上フライス盤の種類は?
卓上フライス盤の種類は、大きさと構造ごとに大別されます。順に解説していきますね。
大きさの分類
通常の卓上フライス盤
通常の卓上フライス盤は、こちらの画像のような形状です(三畑製作所様の卓上フライス盤)。写真だけ見ても大きさにピンと来ないかもしれませんので記載しておくと、X軸とY軸のストロークが400mm×300mm、主軸 / テーブル間最大距離は425mmになります。小型ですが、一般の機械部品加工を行うためには十分なストロークがあり、実用性も高いフライス盤です。
一方で卓上フライス盤という大きいくくりの中では金額が高く、百万円は超える製品になります。
ちなみに画像の卓上フライス盤は税込みで 1,749,000円です。
ミニフライス盤
ミニフライス盤は、事業用というよりは趣味用や簡易な用途のために作られた安価なフライス盤です。
ミニというだけあって、そのストロークは下画像のものであれば130ミリと大変短く、本当に小さなプレートしか確保することができません。
その一方でメリットも大きく、価格が安く抑えられ、場所もとらず、消費電力が小さいです。そのため用途さえはまれはかなり良い選択肢ともいえます。
注意しておかなければならないのは剛性が低い点です。
特に木材や樹脂ではなく金属を加工したい場合、かなり剛性の不足を感じるでしょう。
感覚的には、アルミを切り込み量を小さくしてようやく削れるといった感覚を持っておいた方が良いです。
鋼材を削るのはそもそも難しいと思っておいた方が良いでしょう。
構造上の分類
卓上フライス盤を始めとしたフライス盤には主に3種類の構造があります。
- ベッド型フライス盤: 主軸がZ軸に動かせることに加えて、テーブルをY軸・X軸に動かせる構造です。製品によりますが、剛性を高くしやすく、規則的な仕上がりを求める大量生産にも比較的向いています。最も一般的な形状のフライス盤といえます。卓上もこちらの構造がメインになると思います。
- ひざ型フライス盤: テーブルが前後左右に加えて上下にも動き、刃物が取り付けられている主軸頭が固定されています。通常のフライス盤でしたら、主軸が上下するのが一般的ですので、比較的特殊な構造のフライス盤になります。正直卓上機では見たことがありません。
- ラム型フライス盤: テーブルが上下左右に動き、前後は主軸側が動きます。他の構造よりも大きな素材にも対応でき、自由度が高いのが特徴です。こちらも卓上機では見ませんね。
卓上フライス盤ではベッド型が多い印象です。
ひざ型とラム型については、卓上ではあまりメジャーではありません。また、この三種類以外の特殊な構造のものも販売されていたりもします。例えば門型ですね。テーブルはY軸方向にのみ動き、主軸はX軸とZ軸が動くものがAmazonでも販売されています。
ミニフライス盤で最も気になる点は剛性ですので、本項でご紹介した構造にこだわるのではなく、その剛性にこだわってしっかりとしたものを選ぶのがおすすめです。
小型の卓上フライス盤”ミニフライス盤”
卓上フライス盤にはとりわけ小型のものがあり、それは「ミニフライス盤」と呼ばれます。
ミニフライス盤は、先述のとおりですが安価なのがメリットで、剛性が低いことや、ストロークが短い点がデメリットです。
ミニフライス盤の主軸は、小型化のために主にMTシャンクという、本来ドリル等を取り付けるテーパーシャンクが主軸に使われています。MTシャンクは、面同士を密着させることで保持しているだけなので、主軸横方向の負荷にはあまり強くない保持方法です。小型化に適している一方、工具の抜き差しが面倒、工具が抜けてしまう可能性があるというデメリットがあります。
機種によりますが、基本的に剛性は低いです。Amazonで販売されているような安価なモデルでしたら、主に木材や樹脂を削る用途で使うと考えたほうが良いです。金属は切込量を落とせばアルミの切削なら可能でしょう。ですが一方で、鋼材やステンレスは厳しいと思います。不可能ではありませんが、かなり切込量を落として時間をかけて削る必要がでてきます。
剛性が低い分寸法精度もそれほど期待できませんので、大体+-0.02mm以内の寸法精度が必要な場合はもっと大きいしっかりとしたフライス盤を使ったほうが良いです。
とはいえ、特に趣味で使うにあたって価格が安いと言う点や、小型で設置場所に困らないこと、移動しやすいことは大変なメリットですので、 十分に選択肢の1つとして入ってくる製品になってくると思います。
ミニフライス盤のメリット
- 場所を取らない
- 軽量で簡単に移動できる
- 100ボルト電源で使用可能なので、一般家庭でそのままコンセントをさせば使える
- 価格が安い
- 機種によってはミーリングヘッドを傾斜させられる
デメリット
- シャンクが小径のMTシャンク(モールステーパー)のため、工具の保持能力が弱く、取り替えも面倒
- 剛性が低い
- 主軸やXYZ軸のトルクが低い
- 精度が低い
- 大きい径の工具を使った加工ができない
- ストロークが小さい
ミニフライス盤の口コミの例
ミニフライス盤の代表として”プロクソン little milling1″を例とし、口コミを一部掲載します。
Amazonからもっと多くの口コミが見られますので、購入する場合は参考にしましょう。
・気にいりました、商品全体は完成度の高いとてもよい物です、ただ、テーブルの移動範囲が狭い、三回目に使用した時、連続40分使用中モーターが煙を出しました。残念
・思ったより小さいです、パワーは無いので
プロクソン little milling1のレビュー 出典:Amazon様 https://www.amazon.co.jp/product-reviews/B00CL6HQCG/ref=cm_cr_unknown?ie=UTF8&filterByStar=four_star&reviewerType=all_reviews&pageNumber=1#reviews-filter-bar
木工で使っても、硬い木なら苦労します
少しずつ削る感じですね、穴あけは真っ直ぐに開くので、助かります、楽しんでつかっています
CNCフライス盤の卓上モデル(自動機)
卓上のミニフライス盤でありながら、CNC制御に対応したものもあります。 コンピュータ制御によって、手で動かさなくても自動的に動いてくれる機能です。
一例の製品動画を載せていますので、ぜひご覧ください。より詳しいことについては以下の記事で解説していますのでぜひ合わせてご覧ください!
卓上フライス盤の購入のポイントや価格について解説
卓上フライス盤の中古について
卓上フライス盤は、中古品も選択肢に入ってきます。
中古品の入手先とその特徴について解説します!
中古機械を取り扱う業者
中古の卓上フライス盤は、下記画像の”機械の転職”様をはじめとした、 中古の工作機械を販売する業者から購入することができます。
新品で買うより大きく出費を抑えられるためおすすめです。ですが、古い機械が多いため精度がどの程度出ているか未知数です。中古機械屋さんさえ把握していないクラッシュ(衝突)の履歴がある可能性もあります。
そのため購入前にしっかりと現物を見せてもらい、テーブル・摺動面等の摩耗や精度を確認したうえで購入するようにしましょう。
ちなみにこちらの機械(コスモキカイの型番FK-500)古いですが、価格は¥280,000(税別・送料別)、動作確認済み、バイスも付属だそうです。
Yahoo!オークションも狙い目。
サイズの小さいミニフライス盤限定になりますが、Yahoo!オークションも狙い目です。とにかく価格を抑えることができます。
ですが大変安い一方で、 当然プロが確認して買い取っているわけではありませんし、素人による現状渡しの場合がほとんどですのでリスクは大きいです。現物確認も難しく、ほとんどの場合返品もできません。
そのため万が一購入した後に使えなかった場合のことも考えて、そのリスクを許容できる場合のみ購入するようにしましょう。
ミニフライスではなく、通常の卓上フライス盤についてはサイズが大きすぎるため、Yahoo!オークションでの取引は難しいです。
卓上フライス盤の価格は?
通常の卓上フライス盤の価格
比較的大きいサイズである、以下の光畑製作所の卓上フライス盤を例とすると、価格は執筆時点で1,043,900円(税込み)でした。
100万を越えると卓上機としては高価に感じてしまいますが、やはりしっかりとした精度や170mm程度のY軸ストロークを確保しようと思うとこのくらいの金額は必要になってくるということですね。
ちなみにY軸ストローク250mm程度の少し大きい機械でしたら150万円くらいになります。
そして、機械代金本体だけでなく、そこからバイス代や工具代が乗ってきますので大体プラスで50万円くらいを見積もっておいた方が良いです。
安くはありませんが、このくらいのしっかりした卓上フライス盤であればアルミだけではなく鋼材も問題なく切削できるはずですので、必要経費とも考えることができますね。
ミニフライス盤の価格
大きい卓上機が100万円以上する一方、趣味程度に使用するミニフライス盤でしたら価格は大きく抑えることができます。
例えばアマゾンを見ると、 ピンキリではありますが安いものであれば5万円程度、もう少ししっかりしたものでも23万円程度で商品がラインナップされています。当然サイズは小さく剛性も非常に低いので、鋼材を切削するといった用途では難しいでしょう。
さらに中国製品などで1万円台で購入できるものもあります。しかし実際にAmazonのレビューを見てみればわかる通りあまり良い評価ではなく、安物買いの銭失いになりかねませんので、自分の用途に合った信頼できる製品を選ぶようにしましょう。
卓上旋盤は、卓上フライス盤のお供に最適。
卓上の工作機械には、卓上フライス盤だけではなく卓上旋盤もあります。
5インチチャック、心間400mmと小さいサイズではありますが、趣味用途や小型部品しか加工しない場合は十分活用できるでしょう。
価格については、下記の光畑製作所のモデルで、執筆時点で1,749,000円でした。
卓上旋盤にも卓上フライスと同様に、通常の卓上旋盤よりさらに小さいミニ旋盤もあります。例えばミスターマイスターのCompact3というモデルは、心間150と大変小さい機械で、なんと119,900円で購入することができます。
旋盤やフライス盤は、”大は小を兼ねる”機械です。大きければそれだけ加工の幅が広がりますので、予算さえ許せば大きいものを買っておくのが吉といえます。
卓上フライス盤を自作する!?
卓上フライス盤は自作をすることも一応は可能です。
下記のYouTube動画では、なんと卓上CNCミニフライス盤を自作しています。精度もかなり出ており、剛性もこのサイズにしてはしっかりとあるため、ものすごい根気と技術だと思います。
本当に変態レベルですごいです。初心者がやるにはかなりハードルが高いですね。
先ほど掲載した記事中に、卓上フライス盤のCNC化についても掲載しています!
合わせてご覧下さい。
卓上フライス盤のメーカー一覧と、おすすめの機械
国内で買える卓上フライス盤のメーカには様々なものがあります。本項では、購入しやすいものに絞り、主要な卓上フライス盤のメーカーについて解説しました。
卓上 フライス盤 メーカー
光畑製作所(コスモキカイ)
光畑製作所(コスモキカイ)は、卓上フライス盤のみならず、卓上旋盤や卓上平面研削盤など卓上機を主とした製品ラインナップを持つ会社です。
国産の機械ですし(大阪の会社様です)昭和43年の創業で、 工場も2か所持っており信頼できるメーカーといえます。
光畑製作所は卓上フライス盤の一番のおすすめメーカー
三畑製作所は国内の卓上フライス盤メーカーの中で最も有名かと思います。
しっかりした卓上フライス盤を選びたいのであればこちらのメーカーのものを購入するのが良いかと思います。
東洋アソシエイツ
東洋アソシエイツでは、かなり小さく安価なミニフライス盤を販売しています。 その他に小型の旋盤や、糸のこ盤も販売しています。
昭和55年創業の東京の会社で、ミニフライス盤を買うならこのメーカーが良いかと思います。
株式会社キソパワーツール
株式会社基礎パワーツールは、 昭和33年創業の大阪の会社です。
プロクソンの名称で超小型のミニフライス盤を製造販売しています。 他にもミニ旋盤やドリル研磨機がラインアップされています。
1番小さいものではY軸ストロークは40mmしかありませんが、とにかく安価で購入できます。1番安いものでしたらアマゾンで50,000円台で購入可能です。
卓上フライス盤は日本製がおすすめ
上記でご紹介しているメーカーについては全て日本のものです。
日本の工作機械は精度が高く優秀と世界的にも有名ですので、安心して購入できるメリットがありますね。
amazonなどでは 中国などの海外製のミニフライス盤も販売されていますが、 金額が大変安い反面あまりレビューが良くないため、日本製のものを選んでおくのが無難です。
卓上CNCフライス盤「黒い奴」
現在は販売されていないようですが、”黒い奴”と言う名称の卓上CNCフライス盤が存在しているようです。
YouTubeでも動画が上がっている通り普通に切削できており、安く性能が良かったのだと思われます。 現在ではなかなかオークション等にも出品されておらず入手は困難です。
まとめ:卓上フライス盤は、目的に合った機械の選定が重要
- 小型でコンパクトな卓上フライス盤はスペースを取らず、初心者にも扱いやすい。価格帯も比較的手頃である。
- 剛性やストロークの小ささが小型機の弱み。
- 卓上フライス盤の中古品は価格が抑えられるが、精度やクラッシュの履歴に注意して購入する。
- 日本製は品質が高く、世界的にも評価されているため、安心して購入できる利点がある。光畑製作所などはその代表格。
- 卓上旋盤との組み合わせで、より多彩な加工が可能になり、工作のバリエーションを広げることができる。
- 卓上フライス盤は自作可能だが難易度は高い。比較的安価に自分のニーズに合った機械を作ることができる。
- CNC機能を備えた卓上フライス盤の選び方と活用法。CNC機能を備えた機械は自動化された加工が可能であり、効率的な作業ができる。
- 特にミニフライス盤を検討する場合、価格と性能のバランスを考慮する必要がある。
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