
以前”旋盤工は底辺”と稀に目にすることに対して私の考えを述べた記事を書きました
もちろん私は底辺とは思っていませんが、それとは対照的に19世紀前半、旋盤は英国貴族の趣味として持て囃されていました。
当時の旋盤を調べていて、とても興味をそそられる旋盤を見つけましたので、今回はその旋盤を紹介します。
それがローズエンジン旋盤。
なんと精度を出すための旋盤ではなく、芸術的な模様を描くための旋盤です。
いかにも貴族の趣味らしい、主流の旋盤とは違って実用とはかけ離れたものですね。
ではどういった旋盤なのか紹介していきます。
(本記事は、こちらのアンティーク屋さんのHPを参考にさせていただいています。HRITAGE https://heritage-aj.com/2018/12/gold-roc-18-1017.html)
ローズエンジン旋盤で製作される加工品





これらは全てローズエンジン旋盤で描かれた模様です。
このような幾何学模様を描くことができます。
模様を描く仕組みはスピログラフと同じ

模様を描く仕組みは画像のようなおもちゃに代表されるスピログラフと同じです。

このように鉛筆をギアの穴に入れ、回すと幾何学模様が描かれるおもちゃです。ピンとくる方も多いはず。

その組み合わせ次第で,画像のように様々な幾何学模様を描くことができます。

スピログラフと全く同じ形ではありませんが、ローズエンジン旋盤は上の画像中央の白い金属による歯車が、描く模様を決定するパーツです。歯車がどのような形状なのかで、描かれる模様が変わります。

歯車の種類が多いほど様々な模様を描くことができます。
どのような模様になるかは歯車の設計次第ですが、数学的に計算して設計し、特注で作る必要があるので、意外と簡単ではありません。
CADなどのソフトを使わずにどのような幾何学模様を書きたいかを数学的に考えた上で歯車を設計しなければなりませんので、複雑な模様になればなるほど思い通りの模様を描くには緻密な計算が必要になります。
このようなところに面白さがあり、当時の英国貴族間で流行ったのだと思います。
【動画紹介】ローズエンジン旋盤が動く様子
~2:00までがローズエンジン旋盤の動画です。
2分以降もローズエンジンでの加工ではありますが、回さずに平面を上下させて模様を施しているので旋盤とはまた違います。
ギアに沿って主軸自体が動いてこのような模様を描いています。
機械自体も小さいし、切粉も殆ど出ず電力も必要なさそう。家に一台欲しくなってしまいますね。
言葉にできない美しさ!ローズエンジンミニ旋盤画像




さすが貴族のおもちゃというだけあって、旋盤自体に様々な装飾が施されています。
これで歯車を交換しながら楽しめるのがメカ好きにはたまりません。欲しくなってしまいますね。
まとめ
ローズエンジン旋盤は、19世紀前半のイギリスで貴族たちに大人気だった、少し変わった旋盤です。
普通の旋盤が「いかに正確に、効率よく削るか」を追求するのに対して、ローズエンジン旋盤はまるでスピログラフのように、歯車の力を使って美しい幾何学模様を描くための道具です。「貴族のおもちゃ」ですね。
模様は、どんな歯車を使うか、どう組み合わせるかによって決まります。なので、複雑なデザインを作るには、かなり細かい計算も必要でした。でも、その分完成した模様はため息が出るほど美しく、当時の人たちを夢中にさせたのも納得です。
実際に動画で見ると、動きはシンプルなのにどこか優雅で、機械自体もかなりコンパクト。こうした機械の魅力は、単なる実用品を超え、趣味や芸術性を追求する道具として貴族たちを惹きつけたのだと思います。
見た目の装飾も凝っていて、歯車を入れ替えて模様づくりを楽しむこともできる、メカ好きにはたまらないポイントが満載のこの旋盤。今ではアンティークとしても価値が高く、その優美なデザインは、時代を超えて今も多くの人を魅了し続けています。
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