旋盤用の芯押し用回転センタには実は様々なタイプがあります。
その中でも、私が特に推したいのが先端取替式の回転センタ。
私も仕事で使っています。
汎用旋盤でも役に立ちますが、干渉に気を遣わなければいけないNC旋盤で特に力を発揮します!
先端取替式回転センタって?
先端取替式回転センタとは、画像のようにセンターヘッドを交換することができる回転センタのことです。
センターヘッドの交換が簡単で、用途に応じて右図のように様々な形状のセンターヘッドに交換することができます。
先端取替式のメリットは?
先端取替式の回転センタには普通のものにはない様々なメリットがあります。
芯押しセンタのコストを下げられる
例えば上の2種類の形状の回転センタを揃えようと思うと、通常のセンタであれば本体が2つ必要です。
ですが先端交換式であれば先端を新しく購入するだけで良いため、コストを抑えることができます。
多様な形状のセンタヘッドが使える
先端を交換するコストが低いため、多様な種類のセンタヘッドを揃えることができます。
画像のD型のように先端がくぼんだ回転センタなんて通常なら買う気なんて起こりませんよね。
ですが先端交換式なら気軽に導入することができます。
センタ交換が速い
通常であればセンタを交換する際は、NC旋盤であればレンチを使ってねじを緩めて心押台を抜き、重たいセンタを取り出し、綺麗にテーパー面を掃除してから取り付けるという面倒な作業になってしまいます。
一方先端取替式では、画像のようにセンタヘッド抜き棒をプラハンで軽く叩き込むだけで簡単に抜けます。
先端交換時のテーパーの掃除も、コンパクトな部分の掃除になるのでエアーを使って3秒位で終わります。
それからセンタヘッドを押し込めば完了なので、とてもスピーディです。
干渉してしまった場合でもヘッドを替えるだけで使える
万が一回転センタ先端に工具が干渉し、先端が壊れてしまった場合、先端取替式であれば、新しい先端を購入するだけで簡単に新品の状態に戻すことができます。
回転センタを買い直すのに高いお金を払ったり、修理に時間をかけたりする必要はありません。
自作のセンタヘッドも使える
センタヘッドは回転センタのような回転機構が必要ないため、旋盤を使って比較的簡単に自作することができます。
焼入れ研磨まで行うと時間もかかるでしょうが、応急的に使うだけでしたら無処理でも十分実用可能なセンタヘッドが出来上がります。
こういった柔軟性も先端取替式の魅力です。
デメリットはほぼない
これだけメリットばかり挙げてきてデメリットはないのかという話になりますが、刃先交換式の回転センタを使うデメリットはほぼありません。
センタヘッド交換の際に芯振れが起こる可能性はありますが、交換時に掃除をきっちり行えていれば全く振れることはなく、研磨用に振れ精度+-0.001mmの製品も出ているくらいで全く問題ありません。
ほぼといったのは、剛性はやはり通常の回転センタの方が高いため、びびりにくさで考えると通常の回転センタに軍配が上がります。
ただ先端交換式でびびるものは大抵通常の回転センタでもびびりますし、通常の回転センタでないといけないという場面はほとんどありません。
先端取替式回転センタのメーカー3社
先端取替式回転センタのメーカーを調べてみましたが、なんとインターネットで調べた中では3社しか見つかりませんでした。
さらにセンターヘッドの種類に関して満足できないメーカーを外すとたったの2社しか残りません。
もっと多いと思っていたのですが・・・。
意外と回転センタは作っていても先端取替式はないというところも多く、驚いています。
それらの3メーカーをご紹介します。
カブト工業
おそらく最も有名なメーカーかと思います。
私もここの先端取替式回転センタを使っています。
先端取替式はここのものしか使った経験がありませんので比較のしようがありませんが、5年ほど使ってきて今まで回転センタのことで不満を持ったことはありません。
欲しいセンタヘッドが揃っているのもポイント
こちらの3種類のセンタヘッドが揃っているのはGOODポイントです。
特に先端φ5のセンタヘッドは無いと仕事にならないくらいヘビーに使っていますので、それがラインナップされている点は大きいです。
ケイテック
ケイテックという兵庫県の会社です。
それほど立派なホームページではありませんでしたが、特選品は振れ精度0.002mm以下のものも用意していると書いてありましたので、製品はしっかりしていそうなイメージです。
センタヘッドもこれだけの種類がラインナップされており、カブト工業の紹介で欲しいと書いた3種類に関しても、全て用意があります。
HPには価格が載っていないので比較ができませんが、価格やスペックを見比べて気に入ったほうを購入すると良いと思います。
ROEHM(レーム)
ROEHM(レーム)はドイツのメーカーです。
回転センタ以外にもチャックなどのクランプ器具を作っているメーカーです。
先端取替式回転センタも作っており、竹田商事などの輸入販売業者から購入することができます。
センタヘッドの種類が少ない
上記のような先端取替式回転センタも作っていますが、ROEHMは残念ながら購入の候補には入りません。
その理由は、センタヘッドの種類が少なく、特によく使う先端φ5のセンタヘッドがないからです。
見つけられた限りではカブト工業とケイテックの二択・・・。意外と少ないですね。
私がNC旋盤に使っているのはこちら
私がNC旋盤に使っているのがカブト工業のKSシリーズ。
クーラントが入り込まないようになっている防水仕様のものです。
使っていて特に不満はありません。
主に使うセンタヘッド
日々の仕事で、具体的にどんなセンタヘッドを使っているかご紹介します。
先端φ5のセンタヘッド
最も使用頻度が高いのがこのセンタヘッドです。
通常のワークであればほとんど常にこのセンタヘッドをつけています。
このセンタヘッド、見ての通りとても干渉しにくいです。
φ5までなら全く干渉を気にせずに普通の段取りで削れますし、気をつけながらであればφ3まで芯押ししながら削れます。
当然普通のセンタヘッドよりびびりやすいですが、そのようなびびりを特に気にしなければならないワーク以外はこのセンタヘッドで十分です。
通常のセンタヘッド
初期装備のセンタヘッドです。
通常はφ5のものを使いますが、びびりが気になる場合はこの通常のセンタヘッドに変えてやります。
やはり安定性があり、最も安心できるセンタヘッドです。
先端が平らなセンタヘッド
こちらのセンタヘッドは、盤木でワークを押す際に使っています。
ホイストを使わなければならないほど思いワークでは、しっかりチャックの奥まで掴むために、盤木を噛ませた上で心押台でワークを押しながらチャッキングすることがあります。
その際に盤木を押す役割をしてくれるのがこのセンタヘッドです。
センタ穴を開けられない形状のワークなんかは、盤木を噛ませたまま削りを行うこともあります。
比較的大きい物を加工する際に、この盤木を使った方法は覚えておくと便利ですよ。
ただこの使い方であればセンタヘッドの精度が出ている必要もありませんし、焼きが入っている必要もありません。
購入せずに、自作しても良いですね。
できればこのセンタヘッドもほしい
このセンタヘッドは持っていないですが、あれば便利だと思う場面がたまにあります。
このカブト工業の回転センタは、その先端取替の性質上、φ20〜φ25の穴に芯押しを行うことができません。
そんなときにこのセンタヘッドがあれば、そういった穴にも芯押しを行うことができるので便利だと思います。
便利なので買ったほうが良い
カブト工業のまわしものでも何でもありませんが、もしこの便利さを知らない方がいれば、すぐにでも買ったほうが良いと思います。
特にφ5のセンタヘッドは一度使ってしまうとコレがなければ仕事ができなくなるほど便利ですので、是非使ってみることをおすすめします!
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