【機械技術3月号】エンドミルの摩耗を自動判定!?工具管理システム「ツールソムリエ」がすごい!

本ページでは、雑誌「機械技術」より、面白かった記事をご紹介します!!

機械技術3月号は「工具管理から始める切削加工現場のDX」、「新価値を生む工作機械のレトロフィット」の2つの特集が組まれています。

その中でも特に面白かったのが、モリマシナリーの「ツールソムリエ」という工具管理システムです!

工具管理だけでなく、紹介されているAI技術が大変面白く、製造業の未来を垣間見れる内容になっています!

工具管理システム「ツールソムリエ」

こちらの工具ストッカーがモリマシナリーの「ツールソムリエ」です。

工具をワインに例え、ソムリエがワインを選ぶように工具を選ぶことからツールソムリエという名称なのだそうです。名前にセンスがありますね!

大人数、多台数での工具管理に!!

工具ストッカーは小規模の町工場には必要なく、比較的大きい会社で活用されるものです。

複数の機械、大人数で共通の工具を使用していると、工具の管理が大変になってしまいます。

例えばどのエンドミルが摩耗しているかなどは各個人の判断になってしまうため、欠けた工具を使って無駄な段取り時間を取られてしまったり、そのせいでワークが不良になってしまうことも十分ありえます。

ツールソムリエは、ただ工具を整理整頓し在庫管理を行うだけではなく、摩耗状態などの判断、さらには切削条件を決めるサポートまで行う、加工全体に関わる工具管理システムを目指して作られています。

摩耗状態を一定の基準で管理

ツールソムリエにはCCDカメラが搭載されており、エンドミルのような工具の刃先の状態を精密に測定することができます。

はじめに、測定方法を指示したレシピを作成することで、その後の測定は全て自動で行われる機能がついています。

こうして測定された工具から、どこまで摩耗したら工具の寿命と判断するかを設定しておけば、工具の寿命の判断をツールソムリエに任せることができます。

そうすれば複数人で一つの工具を管理しているとき、寿命の判断が人によってばらつき、他の人が使った後に困ることがなくなります。

各自で摩耗具合を判断するために人数分の工具を用意している場合も、判断をツールソムリエに任せてしまえば一本の工具ですみますね。

工具の摩耗判定に必要な「熟練の目」をAIで学習

加工を行っている方ならご存知の通り、例えばエンドミルの摩耗具合の判定には「熟練の目」が必要ですよね。

その「熟練の目」をAIに学習させる技術も開発しているそうです。

切削工具を使用されている方なら、誰でも考えたことがあるだろう。 「このドリルはまだ使用できるか?」「少しエンドミルの加工条件を下げて使ったほうがいいか?」。

熟練作業者なら、摩耗した羽野状態、切削音、使用時間等で判断することが可能である。しかし経験の少ない作業者は経験値が少なく悩む時間を多くとられてしまう。

既に刃先に寿命を迎えているエンドミルでそのまま加工をしてしまうと、筋や傷が入り、面荒れやバリ発生など、加工品質に悪影響を及ぼす。また、切れ味も悪くなったエンドミルを使用することで、切削抵抗が増え、ビビリが発生する可能性も高くなり、工具に異常な負荷がかかってしまい、最悪の場合工具自体が破損し、ワークが不良になってしまうこともある。

機械技術3月号

エンドミルが使用できるか判断するためには熟練の目が必要ですし、人によってばらつきがでてくるものですよね。

このような熟練を要する判断は、これまで人の目で行ってきました。

ですが、ツールソムリエでは、その熟練の目をAIが学習し、一定の基準でばらつきなく工具の寿命を判断してくれるのだそうです!

AIツールソムリエでは、岡山大学児玉研究室と共同で、切削加工後の工具摩耗進展状況の予測が可能となるシステムの構築を行っている。

様々な切削条件のもとで加工中に得られる切削負荷から、工具の摩耗に影響を与える因子をデータマイニング手法により定量化することができる。
定量化されたデータベースに対して機械学習手法を応用することにより、初期の切削加工状態から、将来的な工具の摩耗状態をユーザの裁量に基づいて高精度に判断することが可能となる。
切削条件及び工具の選定について、試行錯誤的な検証実験を大幅にカットすることが可能となるため、製造コストの低下に寄与することが期待できる。

機械技術3月号

ユーザー同士をつなぎ、工具判定精度を向上させる!

さらに、ツールソムリエのユーザー同士を、秘匿性の高いノウハウは保護したままでデータをつなぎ、AIの分散・協調学習によって工具判定制度を向上させる技術も開発しているそうです!

このような手法をニューラルネットワークというのだそう。

開発が進めば、様々な加工工場にあるニューラルネットワークを互いにつなぎ、例えば、鉄の加工が得意な会社のノウハウ、鋳物の加工が得意な会社のノウハウを、パラメータを返して共有することにより、どんな加工品においても最適条件で加工可能になり、工具寿命まで最適なタイミングで交換できるようになる

工具ストッカーを買うことで、切削条件の技術ノウハウも買うことができる、近い将来このような時代が来るかもしれません。

AIを活用した未来、楽しみでもあり加工技術者としては恐ろしくもありますね・・・!

雑誌「機械技術」は、このような最新設備や機械・工具などが掲載されており、とても面白いです(^^

ぜひ一度手にとってみてください!

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