
「フォークリフトの免許さえあれば、不況になっても食いっぱぐれることはない」
ネットの掲示板や資格サイトに並ぶそんな威勢のいい言葉を信じて、なけなしの自腹を切って教習所に通おうとしていませんか?結論から言います。現役の製造現場で旋盤を回し、転職も経験してきた私が考えるに、それは半分正解ですが、半分は「甘い幻想」です。
私は旋盤・フライス工として働く中で実際に資格を取得し、現在は現場でリーチリフトに日常的に乗っています。しかし、転職活動の面接や現場の人間関係を通じて「リフトが上手いだけの人は評価されず、加工ができる人が圧倒的に重宝される」という現実も目にしてきました。
この記事では、ネットのきれい事ではない一次情報だけを凝縮して伝えます。
- 製造現場における「免許の序列」
- 「費用0円」で免許を取得するための戦略的な立ち回り
- 新人が直面する、免許がないゆえの「申し訳なさ」
- 教習所では教えてくれない「リーチリフト操作」のコツ
「免許さえ取れば安泰」という思考停止から抜け出し、本当に「食いっぱぐれない」ための武器の磨き方を、私の実体験からすべてお話しします。
結論:フォークリフト免許「だけ」では製造業で食いっぱぐれる
ネットの記事では「持っていれば安泰」と書かれがちなフォークリフト免許ですが、現場の人間からすればそれは半分正解で、半分は間違いです。

物流・倉庫なら「主役」、加工現場なら「持っていて当然」の装備
あなたが目指す業界が「物流・倉庫」であれば、フォークリフトは主役の「メイン武器」になります。しかし私の勤務先のような、工作機械が並ぶ「製造業の加工現場」では、免許の扱いは全く異なります。
加工現場において、フォークリフトは「持っていて当たり前」の、いわば作業服や安全靴と同じレベルの「標準装備」に過ぎません。
実際、私の現在の勤務先ではフォークリフトの資格手当は「0円」です。
会社からすれば「リフトに乗れること」は評価の対象ではなく、業務を遂行する上での大前提。もちろん、乗れなければ仕事になりませんが、それだけで給料が跳ね上がったり、一生の安定が保証されたりすることはありません。
30代半ばからの転職で、面接官が本当に見ている「スキルの優先順位」
30代半ばから後半、あるいは40代での転職において、面接官はあなたの免許なんてほとんど見ていません。
私が数年前に旋盤分野で転職活動をした際、フォークリフトの資格の有無が選考に与えた影響は、驚くほど僅かでした。面接官が食い入るようにチェックしていたのは、以下のような実務に直結するスキルです。
- NC旋盤やマシニングセンタの経験はあるか?
- 単品加工の経験はあるか?
- そして何より「プログラミング」ができるか?
「プログラミングができる」と伝えた瞬間に、面接官の目の色が変わったことを今でもはっきりと覚えています。
現場経験の少ない管理職にとって、プログラミングは非常に聞こえが良い専門スキルです。誰でも1週間ほどで取れる免許をアピールするよりも、こうした替えの効かない加工技術を持っていることの方が、食いっぱぐれないための強力な武器になります。
現場のリアル:加工技術が上がれば製作の回転が早くなり、結果としてリフトに乗る機会が増えて操作も上達するという好循環が生まれます。逆に、リフトだけが上手くても、肝心の「削る」ことができなければ、現場での居場所を確保するのは難しいです。
【現場の闇】免許がない新人を待つ「申し訳なさすぎる」毎日
「免許は必須ではないけれど、あった方がいい」と言われる本当の理由は、スキルの有無よりもむしろ現場の人間関係にあります。
未経験で製造現場に飛び込むと、多くの場合、最初はフォークリフトの資格を持っていません。しかし、この持っていない期間が、現場によっては精神的にかなりきついという現実はあまり語られていません。
自分の仕事なのに先輩の手を止める「精神的きつさ」と「イライラ」
製造現場の加工作業は、材料を倉庫から運んでくることから始まります。加工が完成すれば、それを出荷場へ運び出さなければなりません。
免許を持っていない新人は、これらすべての運搬作業を先輩にお願いすることになります。
「すみません、材料を持ってきてもらえませんか?」
「すみません、これを出荷場までお願いします」
相手が暇な時ならまだしも、現場は常に戦場です。忙しそうに加工機を回している先輩の手を止め、自分のためにわざわざリフトに乗ってもらう。 この申し訳なさは、経験した人にしか分かりません。
特に忙しい時期などは、先輩のいらいらが空気で伝わってくることもあります。「あいつが免許を持っていないから、俺の仕事が進まないんだ」という無言のプレッシャー。これは、仕事のきつさそのものよりも、新人の心を鋭く削ります。その新人が中途入社であればなおさらです。
成長スピードの差。免許がないと「単純作業」から抜け出せない
さらに深刻なのが、キャリアの成長スピードです。
先輩がリフトで材料を運んでくれるのを待っている間、自分にできるのは付随する単純な手作業だけ。リフトに乗れないことで作業指導がぶつ切りになり、結果としてメインである「加工技術」の習得ペースが遅くなってしまいます。
もちろん、リフトの資格は1週間もあれば取れる簡単なものです。しかし、現場での「居心地の良さ」と「成長のチャンス」を最速で手に入れたいのであれば、転職前に自前で取っておくのも決して無駄ではありません。
自腹で4万円払う前に。免許をタダにする立ち回り
フォークリフトの免許取得には、一般的に約4万円前後の費用がかかります。決して安くない金額ですよね。
ここで「食いっぱぐれないために」と慌てて自腹を切る前に、一度賢く立ち回る方法を考えてみてください。
取得費用の相場と、自腹で払うのはもったいない理由
フォークリフト免許の取得費用については多くの人が気になるポイントですが、私のアドバイスは一貫しています。「可能な限り、自腹で払うな」です。
多くの会社では、業務上必要な資格であれば会社負担(0円)で取らせてくれます。実際、私も転職後に会社のお金で取得しました。4万円あれば、新生活のための道具を揃えたり、家族と美味しい食事に行ったりできます。
資格手当の相場は?私の勤務先で「0円」なのは評価の対象外だから
「フォークリフト 手当 相場」で検索すると、月2,000円〜5,000円といった数字が出てきます。しかし、前述した通り、私の現場では0円です。
これは「ケチな会社」という側面もあるにはありますが、製造業においてはリフトに乗れることよりも「難しい加工が速く正確にできること」に対して給料が支払われるからです。
「リフトに乗れます!」とアピールして月数千円の手当を狙うより、「NC旋盤のプログラムが組めます」と伝えて入社時に基本給そのものを数万円上げる。これが、賢い職人の立ち回り方です。
製造業の転職興味がある方は、製造業特化型スカウトサービスの「ミルクル」もおすすめです。こちらの記事で実際に使った感想を書いているため参考にしてください。
【落ちる不安】40〜50人に1人は不合格?試験のリアルと対策
「せっかくお金と時間をかけて受けるのに、落ちたらどうしよう」
そんな不安を抱える方も多いでしょう。ネットでは「誰でも受かる」と言われますが、実際の現場(教習所)の空気感はどうなのでしょうか。実際に受講した経験からお話しします。

技能講習(1トン以上)が必須な理由と、合格率の真実
まず、大前提として取得すべきなのは「1トン未満の特別教育」ではなく、「1トン以上の技能講習」です。
製造現場や倉庫で使われているフォークリフトの多くは1トンを超えています。特別教育だけでは、現場に入った瞬間に「それじゃあ何も運べないよ」と戦力外通告を受けることになりかねません。これが、本当の意味で食いっぱぐれないための最低条件です。
気になる合格率ですが、私が受講した際は約20名のメンバーがいましたが、全員が合格しました。基本的には、真面目に受講していれば落ちる試験ではありません。
教官から聞いた「落ちる人」の共通点:遅刻、無断欠席、コーン接触
しかし、教官の話では「前の教習と前の前の教習で二回連続で落ちた人が出た」とのことでした。一回の教習で約20人が受講するため、30〜50人くらいに一人は落ちるような肌感覚に感じています。
そして、フォークの試験に落ちてしまう主な原因は、運転のセンス以前のところにあります。
- 遅刻・無断欠席: これが最大の不合格理由です。国家資格に関わる講習なので、遅刻は1分たりとも許されません。
- 重大な操作ミス: コース内のコーンに激突し、大きな減点を連続して食らうケース。
普段車を運転していない人は要注意です。実技試験は減点方式で、障害物であるコーンに複数回当たると多くの原点をくらい、試験に落ちてしまいます。
また、意外と盲点なのが教習環境です。
私の場合、教習場所は「建物の屋上」でした。しかも屋根がありません。私が受けたのは秋口だったためまだ問題ありませんでしたが、真夏は文字通り焦げるような暑さ、梅雨時期は雨ざらし、冬は極寒という過酷な環境です。
特に真夏の講習の過酷さは想像もできないため、受講する教習場所の環境によっては季節選びも一つの戦略と言えるかもしれません。
リーチリフトを最短で乗りこなす「現場あるある」
教習所で習うのは、座って操作する「カウンターリフト」が一般的です。しかし、工作機械がひしめき合い、1cmのスペースも無駄にできない製造現場での主役は、立って操作する「リーチリフト」です。
カウンターリフトしか触ったことがない人が現場に出ると、その独特の挙動に最初は必ず戸惑います。
狭い場所で高所に置くコツは「先に上げてから位置調整」
ここで、私が現場で先輩から教わり、最も効果的だった「狭い棚に物を置くコツ」を共有します。倉庫内は通路や棚が非常に狭いことが多いため、この動作が最も難しいです。
教習所では「まず棚の前で車体を真っ直ぐにして静止し、それからツメを上げる」と教わります。しかし、狭い倉庫内の高い棚に荷物を置くときは、このやり方だと車体の角度が合わせづらく、何度も切り返すことになりがちです。
現場での正解は、「置きたい棚の高さまでツメ(荷物)を上げてから、ゆっくりと位置調整に入る」ことです。
実際に置く高さにパレットを持ってくることで、棚の隙間や奥行きが劇的に見えやすくなります。この発想を知っているだけで、新人特有の「何度もガチャガチャやり直す不慣れ感」を軽減できます。
リーチ特有の「段差」による腰痛。空調なし倉庫の熱中症リスク
リーチリフトは小回りが利いて非常に有用ですが、1日中乗るような職場については、体への負担がカウンターの比ではありません。
最大の敵は、「路面の段差」です。
立ち乗りリフトにはサスペンションがほとんどなく、路面のガタつきが足から腰へとダイレクトに突き上げます。私の周りでも、長時間の運搬作業で腰を痛める人は珍しくありません。「座っていない」ということは、それだけで立派な肉体労働なのです。
さらに、製造現場の倉庫は空調が効いていないことがほとんどです。真夏のフォーク作業は危険なレベルの暑さになります。冬は冬で、吹き抜ける冷気の中で指先を凍らせながらレバーを握る……。「フォークリフトは楽な仕事」というイメージで飛び込むと、この環境の過酷さに心を折られるかもしれません。
まとめ:一生仕事に困らないための「加工技術 × リフト」の掛け算
「フォークリフトの免許があれば食いっぱぐれない」という言葉の真実は、それがメインスキルと掛け合わされたときにのみ発揮されます。免許単体ではただの作業員ですが、技術と組み合わさることで、ようやく「替えの効かない職人」になれるからです。
プログラミングができる加工者は「面接官の目の色が変わる」
転職市場において、最も評価が高いのは「自分の頭で考えて、モノを完成させられる人」です。
例えば、同じ製造現場の経験者でも、以下の二者では評価に天と地ほどの差が出ます。
- Aさん: 量産現場で単純作業だけをやってきた。既存のプログラムを流用するだけで、自分では組めない。
- Bさん: NC旋盤やマシニングセンタのプログラミングができる。 ゼロから加工工程を組み立てられる。
本職の加工者からすればプログラミングや新規段取りは当たり前のことかもしれません。しかし、意外にも「プログラムは人任せ」という技術者は多いものです。だからこそ、面接で「プログラミングができます」と伝えた瞬間に、面接官の顔色が変わるのです。
ここにフォークリフトの免許が加わることで、多少印象がよくなることは間違いないでしょう。
リフトが上手いだけの先輩が、現場で評価されない理由
私の職場には、フォークリフトの操作が神業のように上手い先輩がいます。しかし、その人の現場での評価は決して高くありません。なぜなら、その先輩は「新規の難しい加工」をやりたがらないからです。
加工現場のメインは、あくまで「良い製品を削り出すこと」です。リフトは上手いが難しい仕事から逃げる人よりも、多少リフトは不器用でも難しい図面に挑戦する人の方が、給料も信頼も勝ち取れます。
「加工技術が上がれば、製作の回転が早くなる。回転が早くなれば、リフトに乗る機会が増え、操作も勝手に上達していく」
この好循環に入ることこそが、職人として生き残るための正解です。リフト操作はあくまで加工技術という本質を支える「潤滑剤」であると心得てください。
最終結論:フォークリフト免許を「最強のサブ武器」にする方法
フォークリフト免許は、決してそれだけ持っていれば安泰というものではありません。しかし、現場で不可欠なものであり、加工技術の価値を最大化させるための「最強のサブ武器」の一つであることは間違いありません。
- 免許に依存せず、まずは「削る」技術を磨く
- 4万円の費用は、加工スキルを武器に「会社負担」で浮かせる
- 現場に出たら、先輩の手を止めないために「リーチ」を即座にマスターする
この戦略さえ間違えなければ、あなたは昨今の厳しい製造業で転職相場と向き合っても、自信を持って「一生食いっぱぐれない」と言い切れるはずです。






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