工具の購入を検討する際、馴染み深い国内メーカーのものだけを選択肢として考えていませんか?
海外メーカーの工具には、国内メーカーにはない多くのメリットがあります。
本記事では、国内メーカーと比べたときに特にメリットが大きい、ドイツ・HORN(ホーン)社の「サーキュラーミル」にフォーカスしてご紹介します!
これがHORN社のサーキュラーミル!
こちらがHORN(ホーン)社のサーキュラーミルです。
この工具、一本の超硬ホルダに様々な形状のインサートを取り付けることができます。
さらにインサートやホルダに施された工夫により大変びびりに強い上、インサートのラインナップがものすごく豊富なので、ホルダを一本買っておけば様々な場面で活躍します!!
サーキュラーミルの加工動画
こちらがサーキュラーミルの加工動画。
5L/Dを超える突き出し長さでありながら全くびびらずに加工できているのがわかるかと思います。
また、通常の溝入れだけでなく、ねじ切りやR溝、C面・裏面取りも加工している点にも注目です。
これだけ多様な加工をインサートの交換だけで実現できる汎用性、多機能性が魅力です!
サーキュラーミルがびびりに強い理由
・湾曲したすくい面を持つ鋭利なインサート刃先形状
・素材から自社製造の超硬シャンク
・独自の高剛性クランプ機構
1本のホルダで多様なインサートを取付可能
一般的なTスロットカッタは、シャンクと刃先が一体型のものが普通です。
ですがHORNのサーキュラーミルは、これだけ多様なインサートを一本のホルダで使うことができます。
インサートの種類が多様すぎる!
こちらがサーキュラーミルのホルダに取り付け可能なインサートの種類です。
溝入れはもちろん、アリ溝や面取りつき溝、台形ねじなど比較的マニアックな形状にも対応しています。
それぞれのサイズラインナップも豊富で、大きさや形状に合わせて選べます。
さらに驚きなのはギヤミーリング用のチップまであること。普通のフライス屋さんはまず使わない、ギヤの刃切りができるめずらしい形状のカッターです。「ここまでやるか」というのが正直な感想です!
インサートのみの交換で済むので高コスパ
一般的なTスロットカッタはハイスが主で、超硬のものより切削条件を落とさざるをえません。
だからといって超硬ソリッドのTスロットカッタでは金額が高く、一度刃先をだめにしてしまうと買い直しです。
その点サーキュラーミルは、刃先がダメになってもインサートさえ替えれば1本のホルダをずっと使えます。超硬ホルダは高価ですので、1本で事足りるのはありがたいです。
当然ながら刃先も超硬で、高切削条件で加工を行うことができます。
ねじ切りなどの特殊な加工にも対応できる
フライスカッターを使ったねじ切り加工といった特殊な加工は普段はあまり行わないかと思います。
ですが、そういった加工ほど急に工具が必要になるものですよね。
そういった際にも、普段溝入れ用で使っているホルダにねじ切り用のインサートを取り付ければ、ねじ切りに対応することができます。
数物で裏面取りの自動化を行いたい場合だけ裏面取り用インサートを使ったりなど、「たまーに必要になる」加工もカバーでき、便利に使えます。
薄溝加工(すり割り)がすごい!!
HORN社のサーキュラーミルで特徴的なのが、かなりの薄溝に対応したインサートが標準品として販売されている点です。
この薄さがインサート交換で必要なときだけ使えるというのは本当に便利。
なんと溝幅0.4mm、深さ14mmもの薄溝加工にも対応しています!この薄さで14mmも切り込めるのには驚きです。
下に掲載した動画では、薄溝工具を活用したすりわり加工を行っています。気を遣う加工内容ですが、エアブローのみで切粉をうまく排出しながら安定的な加工ができています。
もちろん薄溝だけでなく、正面フライス加工が可能な高剛性の6mm幅インサートや小径のインサートなど、多種多様な溝入れインサートが販売されています。
下にカタログの一部を掲載しましたが、サーキュラーミルだけでこれだけのラインナップがあります。
私が加工する中では、HORN社のカタログ内で加工できなかった溝サイズはありません。
旋盤・フライスともに「溝入れといえばHORN」と言われるのも納得です。
ヘッド交換式なのに高剛性
ヘッド交換式と聞いて一番気になるのが剛性面かと思います。
特にR溝やねじ切り、幅広の溝入れは負荷が大きくなるためびびりが心配ですよね。
HORN社の溝入れ工具は高剛性を売りにしており、突き出しが長く切削負荷が大きくなっても、ソリッド超硬工具並にびびらない加工が可能です。
剛性がわかる加工動画!
一番剛性が分かりやすい加工がこちらです。
これだけの突き出し長さで、R溝を全くびびりなく加工しています。被削材はS45Cです。
さらに、下の動画では通常の炭素鋼より削りにくい材質であるSCM440を小径の刃物で加工していますが、びびりなく削れています!
高剛性な理由は「6面拘束クランプ」
ヘッド交換式でありながらびびりにくい理由の一つが交換インサートのクランプ構造です。
サーキュラーミルを始めとしたHORN社のヘッド交換式工具はクランプ部分がテーパー形状になっており、ボルト1本で6面を拘束でき、剛性を高める構造になっています。
国内メーカーにはないサーキュラーミルのメリット
サーキュラーミルは、国内メーカーと比べて世界シェアの大きい海外製工具ならではの多くの特徴があります。
なぜ国内メーカーのものではなくHORNを選ぶ必要があるのか、国内メーカーとの違いを挙げていきます。
国内メーカーにはヘッド交換式溝入れフライス工具自体がほとんどない
HORN社のサーキュラーミルは、ヘッド交換式にすることで様々な加工に対応することができます。
ですが国内メーカーではシャンクと刃先が一体型のソリッド工具が主流で、ヘッド交換式の溝入れフライスはそもそもほとんど販売されていません。
唯一目にとまったのがタンガロイ社の「タング・マイスター」。HORN社のサーキュラーミルと同じヘッド交換式の工具です。
しかしこの商品、エンドミルも交換ヘッドのラインナップに入っているのが大変魅力的な一方、溝入れをはじめとしたその他のラインナップはHORN社に遠く及びません。
溝入れの形状は5種類、ねじ切りや面取りの形状も種類は少なく、アリ溝や面取りつき溝、台形ねじ、フルR溝などはそもそもラインナップされていません。
ホルダ一本で多様な加工をまかなおうと思ったときに、HORN社のもののほうが様々なヘッドが使えて汎用性が高いのが、私がサーキュラーミルを推す理由の一つです!
国内工具では加工できない内容にも対応できる
サーキュラーミルのインサート形状の中には、そもそもソリッド工具を含めても国内では手に入りにくいような形状もあります。
その一つが先程も紹介した薄溝加工用インサート。
サーキュラーミルの薄溝用インサートは0.4mm幅で深さ14mmまで加工することができ、超硬ヘッドですので、切削条件も十分上げられます。
一方国内でその形状を加工しようと思ったら、下画像のようなメタルソー形状のハイスすり割りフライスに限られます。
ハイスのメタルソー形状のため安定した加工ができる一方、耐摩耗性や切削速度では超硬にはかないませんので、サーキュラーミルとは全く別の工具です。
また、ギヤミーリング、ウィットねじ、台形ねじ、面取りつき溝については、そもそもソリッド工具でも販売されていません。HORNだからできる加工です。
フライスでのねじ切りに関してはスレッドミルが主な工具と言ってしまえばそれまでですが、スレッドミルはピッチが固定されているというデメリットがあります。同じホルダでインサートを替えるだけで様々なピッチのねじを切れるのは汎用性が高く、サーキュラーミルのメリットは大きいです。
2工程を集約できる
HORN社のサーキュラーミルは基本的にストレートのシャンク形状なので、2工程の集約が行いやすいです。
例えばC面取りカッター。表面取りだけでなく裏面取りも加工できる工具形状で、工具を1本に集約できます。同じように、アリ溝カッターも裏面取りを行いやすい形状です。
サーキュラーミルのデメリット
メリットの多いサーキュラーミルですが、安い買い物ではありませんのでデメリットにも目を向けておきました。
エンドミル形状の交換ヘッドがない
様々な形状に対応するサーキュラーミルですが、エンドミルは交換インサートラインナップに入っていません。
「溝入れはHORN」と言われるように、溝入れ系のインサートに特化しているのがHORNの特徴です。
なお、サーキュラーミルでも正面フライス用インサートを使えば、下に掲載したYouTube動画のようにエンドミルのような加工を行うことも可能です。
こちらの動画のワーク材質はSCM440。この材質でアルミのような高送り加工ができるのには驚きです。
ホルダとインサートの適合を確認する必要がある
サーキュラーミルの大きなメリットは1本のホルダで様々な加工に対応できる点です。
ですが、多様なホルダ・インサートの大きさが揃っているため全てのインサートがどんなホルダにでも適合するわけではありません。
そのため、インサートとホルダの適合可否をしっかり確認して購入しないと、目的のインサートを使いたい場合にホルダと適合せず、ホルダをもう一本無駄に買い直すことになりかねません。
しっかりカタログや電話の技術相談を活用して確認し、それでも不安であれば後ほど紹介する「有償サンプル」サービスを活用して工具を試してから購入するようにしましょう。
有償サンプルサービスで、ノーリスクで工具を試せる!!
現在、HORN社ではノーリスクで工具をテスト加工できる「有償サンプル」というサービスを行っています。
国内メーカーではインサートだけでなくホルダごと試せることはほぼありませんので、とても助かるサービスです。
具体的なサービス内容としては、申し込んだ工具のテスト結果が良ければそのまま通常購入として支払いが発生し、テスト加工がうまくいかなければ一切料金は発生しない(工具返品、データシートの送付が必須)というものです。
うまく加工できる確証が持てなくても、このサービスを使えば安心して工具を試すことができます。
HORN社の工具は他にも色々あります!
今回は外径・端面溝入れ用の工具をご紹介しましたが、その他の溝入れ工具も他メーカーの工具と比較してラインナップが大変豊富です。
Tスロットカッターはもちろん、φ0.2の穴ぐりが可能なボーリングバー、内溝、Y軸突切りまで、高剛性なものが揃っています。カタログをみているだけで面白いので、ぜひ一度覗いてみてください(^^
また、ブローチングと小径内径加工「ミニ・シリーズ」、旋盤用溝入れ工具については以前ご紹介していますので、興味がある方はぜひご覧ください!
工具選定の電話サポートも!
「カタログだけで工具を注文するのは不安。電話で確認しておきたい!」という方も多いと思います。私もそのタイプです。
HORN社でも、国内の工具メーカーと同様に電話で技術相談を受け付けています!
こちらの電話番号から、IZUSHI 刈谷テクニカルセンターにご相談ください。
→HORN工具に関する技術相談窓口(IZUSHI 刈谷テクニカルセンター)TEL:0566-62-8075