
金属加工の現場で「キー溝」や「六角穴」等の加工を自社で完結させたいと考えたとき、圧倒的な費用対効果と付加価値を生み出してくれるのが、NC旋盤やマシニングセンタを用いた「ブローチング加工」です。
これまで設備がなければ「専門の外注業者に出すのが当たり前」だった難しい形状を、使い慣れた汎用機に工程集約し、旋削・転削直後にそのままワンチャッキングでキー溝等を仕上げることが可能です。
本記事では、10年以上現場でNC旋盤・マシニングセンタをはじめとした機械加工に携わってきた筆者の実務経験をもとに、ブローチング加工がもたらすメリットを徹底解説します。
さらに、現場で最も知りたい「SUS304などの難削材を精度よく長寿命で削るポイント」や「プログラム作成のコツ」「チッピングを防ぐ注意点」、そして加工精度とスピードを極限まで高める高性能工具「HORN」や「BENZ」の活用法まで、分かりやすくお届けします。
今ある機械で仕事の幅を広げるためのノウハウとして、ぜひ参考にしてください。
ブローチング加工とブローチ加工の違いとは?仕組みと加工原理
金属加工の現場で「キー溝」や「六角穴」の内径加工を検討するとき、近年特に候補に挙がるのが「ブローチング」という加工です。しかし、WEB上の情報を見ると、「ブローチ加工」と「ブローチング加工(英語:Broaching)」が同じ意味として曖昧に扱われているケースが少なくありません。
結論から言うと、これらは現場の実務においては「全く異なるアプローチの加工方法」です。
【本記事での定義】ブローチ加工とブローチング加工の決定的な違い
言葉の意味に曖昧な部分がありますので、本記事では以下のように定義して解説を進めていきます。
- ブローチ加工(従来の加工法):専用の「ブローチ盤」を使い、「ブローチ」と呼ばれる細長い多刃工具を一回引き抜いて通過させるだけで、目的の形状を一発で成形する加工方法。
- ブローチング加工:NC旋盤やマシニングセンタの主軸を固定し、スロッター加工のように刃物をワークに対して何度も往復(突っ突き加工)させ、少しずつ切り込みながら形状を作っていく加工方法。
つまり、「専用機で一発で抜くか」「使い慣れたNC旋盤やマシニングセンタで、何度も突っ突いて削るか」の違いです。
ネット検索で「ブローチング とは」と調べて出てくる情報は前者の専用機を指していることも多いですが、現代の町工場で大きな武器になるのは、初期費用の小さい後者の「ブローチング加工」です。
ブローチ加工の原理・種類と加工動画
従来の「ブローチ加工」の仕組みは非常にシンプルです。
ブローチという工具は、手前から奥に向かって刃の高さが段階的に高くなっています。この工具をブローチ加工機にセットし、下穴に通して油をかけながら一本丸ごと引き抜きます。
刃が通過するにつれて自動的に適正な切り込み量で加工が進むため、わずか数秒から十数秒の「1パス」で、正確なキー溝や複雑なスプライン形状が完成します。
量産品であれば圧倒的なサイクルタイムの短さで大きなメリットが出ますが、加工形状ごとに高価な専用工具(一本作るのに数十万円〜)が必要になるため、多品種小量生産がメインの町工場ではコスト的に導入が難しいというデメリットがあります。

ブローチング加工とスロッター加工・キーシーター・ワイヤーカットの違い
内径のキー溝加工や多角形加工を行う手段は、ブローチングだけではありません。専用機である「スロッター(縦削り盤)」やキー溝であれば「キーシーター」、さらには放電加工の一種である「ワイヤーカット(放電加工機)」などがあります。これらと、NC旋盤で行う「ブローチング加工」の違いを整理しておきましょう。
| 加工方法 | 使用する機械 | 特徴 |
| ブローチング加工 | NC旋盤 / マシニング | 旋削や転削直後に機内で加工する「工程集約」が可能。段取り替えがなく同軸度が抜群。止まり穴も対応可。 |
| スロッター加工 | スロッター専用機 | バイトを上下に往復させて削る。 汎用性が高いが、別工程になるためチャッキングの手間と芯ズレのリスクがある。 |
| キーシーター加工 | キーシーター | 主に貫通のキー溝加工専用。 機械がコンパクトで段取りは早いが、別工程のコストがかかる。 |
| ワイヤーカット | ワイヤー放電加工機 | 精度は非常に高いが、ワイヤーを通す必要があるため「貫通穴」しか加工できない。 加工速度が遅くコスト高。 |
専用機を使ったキー溝加工やワイヤーカットは、どうしても別工程への移動(外注化や別機械への載せ替え)が発生し、段取り時間や精度の低下を招きます。
それに対し、HORNなどの高剛性工具を使用した「ブローチング加工」は、使い慣れたNC旋盤のタレットに工具を取り付け、プログラム制御によってスロッターと全く同じ動きを機内で完結させます。 この「工程集約」こそが、切削現場において最大の付加価値を生み出すポイントになります。

町工場がNC旋盤・マシニングで「ブローチング加工」を行うメリット・デメリット
汎用機であるNC旋盤やマシニングセンタを使って機内で突き加工を行う「ブローチング加工」は、特に多品種小量生産や短納期対応を求められる町工場において強力な武器になります。
しかし、どのような技術にも必ず一長一短があります。本項では、私自身が実務で実感しているリアルなメリットとデメリット(注意点)を解説します。
【最大の強み】NC旋盤への工程集約で外注費削減と圧倒的な短納期対応へ
町工場がブローチング加工を導入する最大の強みは、「自社完結による外注費の削減」と「リードタイムの大幅な短縮」にあります。
キーシーターやワイヤーカットなどの設備を持たない小規模な町工場では、キー溝加工や六角穴加工が必要なワークを加工する際、どうしてもその工程だけを外注加工メーカーへ依頼せざるを得ませんでした。しかし、これには以下のような多くのロスが発生します。
- 往復の運送手間と、それに伴うロスタイム(中2〜3日以上の納期遅延)
- 少量になるほど割高な加工賃が発生し、余計なコストがかかる
- 外注先でのチャッキングミスや段取り替えによる、同軸度・対称度のズレ
- 外注先による外観の傷などのリスク
これをNC旋盤やマシニングセンタを用いた機内ブローチング加工に置き換えることで、外注費はゼロになり、製品はワンチャッキングで完成します。
基本的に小規模の町工場は「他社が嫌がる難しい仕事や急ぎの仕事」をいかに早くこなすかという隙間産業です。
自社で一発完結できる対応力を持つことは、競合他社に対する圧倒的な相見積もり上の強み、そして短納期という付加価値に直結します。
ワイヤー不可の「止まりのキー溝」で高価な放電加工を回避できるメリット
ブローチング加工が真価を発揮するのは、貫通したキー溝だけではありません。現場で嫌がられる割によく見る「高精度な止まりのキー溝」において、非常に大きいコスト削減効果を発揮します。
貫通穴であればワイヤーカットやキーシーターで比較的容易に加工できますが、ワークの奥に壁があり、逃げ溝や逃げ穴でキー溝が止まっている構造の場合、ワイヤーカットは物理的に使用不可能です。
そうなると、従来は以下のどちらかを選択するしかありませんでした。
- スロッターによる加工で突き加工を行う(精度には限界がある)
- 「放電加工(型彫り放電)」を外注に依頼する
特に放電加工を選択せざるを得ない場合、その製品「専用の電極」を事前に製作する必要があるため、外注費が非常に高価になり納期も大幅に伸びてしまいます。
しかし、NC旋盤でのブローチング加工であれば、プログラムで刃物のZ軸ストロークを制御するだけなので、逃げ部分の手前でピタッと加工を止めることが容易に可能です。
電極製作の手間もコストも一切かからず、治具や専用機への載せ替えによる位置ズレの心配もないため、幾何公差が厳しいワークでも高精度に仕上がります。
さらに、NC旋盤の精度で加工できるため、0.01mm台の深さ公差にも問題なく対応可能です。
ブローチング加工のデメリットと機械への負荷・寸法逃げの注意点
一方で、ブローチング加工を導入する際には、必ず現場で把握しておくべきデメリットと注意点があります。
- ミスした際の機械(主軸やタレット)故障リスク:通常の回転切削とは異なり、主軸を固定して刃物台(タレット)をZ軸方向に直線往復させてワークに突っ突くため、切込み量のミスがあると瞬間的に大きな負荷がかかります。機械の刃物台や主軸に過度な負担をかけないよう、適切な切り込み量の管理が必要です。
- 剛性不足による「寸法逃げ(たわみ)」:ブローチング工具は、細い内径の奥深くまで進入させるケースに備えて、突出し長が長い(L/Dが大きい)工具を選びがちです。これにより加工中に工具自体が「逃げる方向」にしなり、入口からすぐに寸法が急激に小さくなって、狙った寸法が出にくくなります。
このデメリットへの対策として、「汎用性が高いからといって、無駄に長いタイプのホルダを選ばないこと」、そして「剛性が高く設計されたツールを選定すること」が重要になります。
NC旋盤でのブローチング加工のコツとプログラム作成(SUS304・鋼材対応)
NC旋盤を使ったブローチング加工は、一度コツを掴めばこれほど頼もしい加工方法はありません。しかし、初めて挑戦するときは「プログラムはどう組めばいいのか」「刃物がぶつかったり欠けたりしないか」と不安になるものです。
ここでは、私が実際にプログラムを作成し、粘り気があり刃物も逃げやすい難削材「SUS304」や各種鋼材の加工を経験してきた実務ノウハウを、余すことなく公開します。
【プログラムTips】オークマ等の「対話(内径荒加工)」を流用した簡単な作成手順
「ブローチング加工のGコードを一から手打ちするのは面倒だし、プログラムミスが怖い」と思っていませんか?
実は、私が使っているオークマ(OSP)などの対話機能であれば、手打ちプログラムをほぼ編集することなく、安全な加工パスを数分で作ることができます。
私が実際に行っている、対話機能を使ったプログラミングの手順は以下の通りです。
- 「内径荒加工サイクル」でプログラムを作成する:対話画面上で、通常の「内径荒加工」を使用するプログラムを作成します。ブローチング工具の取り付けについても、刃先位置の設定(ツールセット)を内径荒バイトと全く同じ要領で行っておきます。
- 内径荒加工の前後に、対話上の「NCプログラム」で以下のコードを入れる(※具体的なコード番号は機械メーカーやNC仕様で異なるため、サポートへの電話や取扱説明書で確認してください)
- 主軸を指定の位置に割り出し、停止・固定するコードを入れる
- 送りの指令を「毎分送り(mm/min)」を制御するコードを入れる
- 主軸停止状態でも刃物台を動かせる「インターロック解除コード」を挿入する
- 対話プログラムの最後に、以上の設定を元に戻すコードを入れる
- 作成したプログラムを通常通りNCコードとして書き出す
- 書き出したコードを1箇所だけ修正・追加する
- 主軸正転コード(M03)を削除する(主軸が回転したまま突っ込むと大事故になるため、必ず削除しておきます。)
この方法を使えば、普段の旋削加工と同じ感覚でプログラムが作れます。さらに、加工パスや送り速度の編集も容易なため、工具の寸法逃げを相殺するために「わずかにテーパーで走らせるパス」へと変更する作業も、ミスなく短時間で行えます。
私はマザックは経験がありませんが、森精機はオークマと似た対話なので、おそらく同様の方法で応用可能かと思います。行き詰まった場合はこの考え方を軸に、メーカーサポート等にプログラムを確認しましょう。
そして、加工開始前には、衝突を防ぐため「本当に主軸が止まっているか」を必ず目視で確認しておきましょう。

事前確認が成否を分ける!ブローチング加工時における7つの必須チェックポイント
実務でブローチング加工を行うにあたり、刃物の破損や寸法不良を防ぐために、必ず以下の「7つの要素」を図面や手持ちの工具と照らし合わせて確認しておきましょう。
- 最小加工径(下穴径):工具先端部やホルダーが干渉せずに進入できるか。
- 加工キー長さ(ブローチング深さ):工具の加工ストロークに収まっているか。
- キー高さ(溝深さ):刃物の高さを超えていないか。
- 溝底R:コーナー部の形状指示に合うインサート刃先Rか。
- キー幅(溝幅):インサートの刃幅が公差内か。(Y軸を使えば必ずしもぴったりである必要はありません。Y軸を使う場合、プログラムは少々複雑になります。)
- 逃げ溝(逃がし)の有無:止まり穴の場合、突っ突いた後の切粉が最奥部で逃げられる空間が確保されているか。
- 主軸ロック機能の有無:ブローチング加工は主軸を固定して加工を行うため、主軸ロック機能がついている機械でのみ対応が可能となります。

「ゆっくり送る」と一発でチッピングする
初めてブローチング加工を行うとき、ぶつかってしまう恐怖から、おそるおそる「送り速度をゆっくり」にして削りたくなると思います。私も最初はそうでした。
しかし、送り速度を極端に遅くすると、超硬に適した切削速度から大きく外れてしまい、一発で刃先がチッピングして終了します。
特にSUS304のような削りにくい材料では一撃でやられます。はじめの1パスは削る手前の当たらない位置になるようプログラムを組んでおき、エアカットで確認した上で、工具メーカーが提示している「推奨切削条件(送り・切り込み量)の範囲内」で削ることが、刃物を長持ちさせるポイントです。
SUS304や鋼材の「むしれ」「逃げ」を防ぐ切削条件と切削油のポイント
粘り気のあるSUS304や炭素鋼・アルミを加工する際、最も発生しやすいのが「内面のむしれ」と「寸法逃げ」です。これらを解決するための現場のセッティングのコツは以下の2点です。
- 「工具の長さ」を限界まで短くする:汎用性を求めて無駄に長いシャンクの工具を使うと、工具剛性が不足して逃げる方向に曲がってしまいます。
その結果、切り込みの開始点から奥にいくにつれて急激に寸法が小さくなります。
多少の逃げはゼロカット(切り込みを入れずに同じパスをなぞる)で改善しますが、擦れ摩耗で寿命が縮みますし、完全に改善できるわけではないため「加工深さに対して必要最低限の長さの工具を選ぶこと」、そして「HORNなどの高剛性ホルダーを使うこと」が根本的な対策になります。 - 切削油をピンポイントで当てる:刃物の潤滑も重要です。刃物の寿命をのばし、良好な仕上げ面を得るために、刃先にしっかりと切削油を当ててやってください。私は普段ソリュブルの水溶性のクーラントを使っており問題なく加工できますが、それよりエマルション、さらに潤滑性を求めるなら油性の方が切削性が良いです。


バリ取りも非常に楽「旋削仕上げ⇒ブローチング⇒仕上げゼロカット」でバリを削る
H7などの比較的厳しい穴公差の内側にキー溝などを加工すると、溝のキワにわずかな「バリ」が必ず発生し、それにより穴に栓ゲージが通らなくなることがよくあります。キーシーター等だと特に顕著です。
これが本当に厄介で、小径で穴が長かったりすると、ヤスリやリューターが届きにくく作業性が非常に悪くなり、手作業のバリ取りだけで30分浪費する、といったトラブルが頻発します。
そしてそのバリの発生自体はブローチングも例外ではありません。
ですが、ブローチングであれば、載せ替えによる芯ズレが起こらないことを活かし、以下の手順でこのバリ取りを完全に自動化できます。
1. 内径旋削で普通に公差を仕上げる
2. ブローチング加工を行い、溝を成形する(この時、内径側にバリが押し出される)
3. 内径仕上げバイトを呼び出し、ゼロカット(もしくは0.01〜0.02mmだけひかえて引き直す)を行う
ブローチングの後に内径をサーメットの研磨ブレーカー(切れ味重視のインサート。内径仕上げに使うものと同様のもの)でサッとバリ部分だけを削ることで、押し出されたバリがきれいに削り落とされ、手作業ゼロで栓ゲージがスッと通る完璧な仕上がりになります。
内径仕上げバイトが断続切削になるため、サーメットの研磨ブレーカーではチッピングするのではと心配されるかもしれませんが、バリを削り取るだけの非常に微細な断続なので、全く問題ありません。
京セラのPV730のような比較的断続に強いサーメットを使えばより安心です。手作業のバリ取りに苦労されている方は、ぜひ次の段取りから試してみてください。
キー溝・六角穴・スプライン・トルクス穴加工の下穴と形状別の注意点
ブローチング加工を成功させるポイントの一つは、加工する形状に応じた最適な下穴(したあな)の設定と事前準備です。
下穴の大きさを誤ると、刃物への負荷がかかりすぎて刃先が欠けたり、狙った形状の規格を外れてしまったりします。
ここでは、代表的な加工形状である「キー溝」「六角穴・四角穴」「スプライン・ギヤ」「トルクス穴(ヘキサロビュラ)」について、実務における下穴と加工のポイントと注意点を個別に解説します。
キー溝加工および六角穴やトルクス穴の下穴と加工のポイント
内径ブローチング加工で最も頻度の高いこれらの形状は、それぞれ下穴の狙い値と加工時の刃物の挙動に特徴があります。
キー溝加工の下穴と精度
キー溝加工では、下穴径がそのまま軸穴の完成寸法(公差部)になります。そのため何も考えることはなく、図面通りに下穴を仕上げればOKです。
形状によっては歪みに注意しましょう。場合によってはブローチングで歪ませた後に内径を仕上げることも視野に入れる必要があります。
六角穴(四角穴・トルクス穴)の下穴と対角寸法
六角穴や四角穴をブローチング加工する場合、「対辺寸法(二面幅)」と「下穴径(内接円)」の関係が極めて重要です。
例えば、六角穴を加工する場合、下穴径を六角の対辺寸法(平らな面と面の距離)と全く同じ、あるいはそれよりわずかに大きく設定します。なぜなら、下穴を小さくしすぎると、ブローチング工具が削る面積(取り代)が多すぎて機械や刃物に過度な負荷がかかり、チッピング等の原因になるためです。
逆に大きくしすぎると、下穴のRが残ってしまい、見栄えが悪くなります。具体的な下穴寸法については工具メーカーのカタログに掲載されていますので、その数値を確認してそのとおりに行いましょう。
トルクス穴も同様で、カタログに記載通りの下穴径で行えばOKです。
スプライン・ギヤ加工におけるブローチング
スプラインや内歯ギヤ(歯車)のブローチング加工は、機械のC軸で割り出しを行いながら1溝ずつ削っていきます。しかし、ギヤ形状・寸法はワークごとに大きく異なるため、標準ラインナップにない場合がほとんどです。
そのため、ギヤブローチング加工を行う際は、以下のポイントを押さえて動き出すのがベストです。
早めに工具メーカーへ相談する:ギヤや特殊形状は図面段階からの設計が必要になるため、余裕を持った打ち合わせが大切です。
HORNの特注(特殊品)対応を活用する:HORNは特殊形状の設計・製作に長けており、特注品であっても短納期での対応が可能です。このような短納期対応のメーカーに一度問い合わせてみましょう。

高能率・高精度なブローチング加工を実現する「HORN」の工具
NC旋盤やマシニングセンタを用いたブローチング加工において、加工精度を安定させ、刃物を長持ちさせるためには「工具の選定」が非常に重要です。当サイトからおすすめしている「HORN(ホーン)」の工具と、そのポテンシャルを最大限に引き出す最新ユニットについて解説します。

高剛性と精度を兼ね備えた「HORN」の工具
NC旋盤でのブローチング加工において、現場の技術者を最も悩ませるのが「寸法逃げ」と「インサート交換の手間」です。特に内径のキー溝では、ツールホルダーが細長く突き出た状態になるため、切削抵抗によってホルダーが逃げやすく、厳しめの公差になると目標の寸法通りに仕上げるのが難しくなります。
この寸法逃げの解決策として、HORNのような刃先交換式かつ圧倒的な剛性を持つ工具を選択するのがおすすめです。HORNのホルダーは全ラインナップを通して非常に剛性が高いのが特徴で、肉厚で硬く、強靭な設計となっています。そのため、ブローチング加工特有の断続的で強い衝撃を受けてもたわみやチッピングが発生しにくいです。
また、HORN製ホルダのインサートクランプは非常に高精度です。摩耗したインサートを交換する際も、ホルダーを機械から外すことなく機上で素早く交換でき、かつ刃先位置の再現性が極めて高いため、再段取りによる寸法ズレを最小限に抑えられます。




キー溝からトルクス穴まで網羅!HORN製ブローチング工具の豊富なラインアップ
ブローチング加工を自社で運用するにあたり、できるだけ多くのサイズラインアップがあるメーカーの工具を使った方が、形状ごとにメーカーを考える必要がなくなります。
HORNのブローチングツールは、単なるキー溝加工だけに留まらず、町工場の現場で頻出する多くの内径・特殊形状に対応する極めて豊富なバリエーションを標準ラインナップしています。
現場の加工サイズに合わせて選択できるよう、主に以下の2つの強力なシリーズがベースとして用意されています。
- 「105 / 110」シリーズ:小径加工に最適なシステムで、下穴径φ6.0 mmという極小径から加工が可能です。キー溝(Nw = 2〜6 mm)、面取り、四角穴(SQ = 4〜13 mm)、六角穴(SW = 2〜16.5 mm)、さらには特殊なトルクス穴の加工にまで対応しています。
- 「117」シリーズ:より大きなサイズや高い剛性が求められる加工に対応するシステムで、下穴径φ9.0 mm以上に対応します。キー溝(Nw = 2〜20 mm)、面取り、四角穴(SQ = 9〜22 mm)、六角穴(SW = 9〜36 mm)と、幅広い加工領域をカバーします。
これら標準インサートのなかでも、使用頻度の高いキー溝のJIS対応規格(公差 D10 / Js9 / P9 / H9 など)に適合するアイテムは国内在庫がしっかりと拡充されているため、急な案件でも素早い対応が可能です。
さらに、上記だけでなくギヤ、スプラインに対応したブローチング工具も、特殊対応にて購入することができます。


【発展編】加工速度1.5倍&内部給油でさらに安定する「BENZブローチングユニット」
さらに加工効率を高めたい、あるいは量産対応で圧倒的な短納期を実現したいという現場におすすめしたいのが、HORNのホルダーと相性抜群のドイツ・BENZ(ベンツ)社製「ブローチングユニット」です。
これはミーリング軸(回転工具)の回転運動をZ方向の高速往復運動へと変換するホルダーユニットで、通常のターレット送りによるブローチングと比較して約7倍以上という驚異的な加工スピードを誇ります。
特筆すべきは、安価な標準品(WTO製など)と比較した際の上位互換性と圧倒的な優位性です。
| 項目 | 他社製(WTO製など)標準品 | BENZ社製 ブローチングユニット |
| ギヤ比(旋盤用) | 1:1 | 2:1(2回転で1ストローク) |
| 最大ストローク回数 (32mmストローク時) | 1,000 ストローク/min | 1,500 ストローク/min |
| クーラント方式 | 外部給油式 | 内部給油式(給油穴×2個) |
他社製品が最大1,000ストローク/minであるのに対し、BENZ製はギヤ比2:1を活かしてMAX 3,000 rpmの回転数に対応し、最大1,500ストローク/minを叩き出します。
これにより他社ブローチングユニット(1,000ストローク/min)と比較して加工速度は実に1.5倍となり、サイクルタイムを大幅に短縮できます。



そして現場目線で最も重要なのが、BENZ製が「唯一無二の内部給油式(2箇所)」という点です。 ブローチング加工、特に小径穴や深穴のキー溝・スプライン加工では、刃先にクーラントが届かず潤滑不足に陥ったり、切り粉が穴内部で噛み込むことにより、チッピングやホルダー破損を引き起こすトラブルが起こりがちです。
BENZの内部給油機構は、HORNの内部給油ホルダーと組み合わせることで、刃先へピンポイントに高圧クーラントを噴射します。
これにより、刃先を潤滑しながら切り粉を前方に強力に押し流すため、切り屑トラブルによる突発的な機械停止を完全に防ぐことができます。
なお、このBENZ製ユニットは内径・外径問わず、最大モジュール m 5.0の大径ギヤやスプライン加工まで対応可能です。
国内での導入相談や詳細な見積もりについては、輸入代理店である株式会社IZUSHI(中部支店/刈谷テクニカルセンター)が万全のサポート体制を整えています。
HORNは工具選定の電話相談も可能
海外メーカーというとサポート面が不安なイメージもありますが、HORN社は下記の電話窓口より、国内の工具メーカーと同様に電話で技術相談を受け付けている点もおすすめできるポイントの一つです。
電話番号も以下に掲載しておきますので、ぜひご活用ください!
→HORN工具に関する技術相談窓口(IZUSHI 刈谷テクニカルセンター)TEL:0566-62-8075




まとめ:ブローチング加工の集約で、多様な加工をこなせる強い現場へ
ここまで解説してきた通り、これまで「専門の外注業者に出すのが当たり前」だったキー溝や六角穴、スプラインといった形状は、現代のNC旋盤やマシニングセンタ、そしてHORNやBENZといった超高性能な工具・ユニットの登場によって、完全に「自社工場内で工程集約できる加工」へと進化しました。
ブローチング加工とは、単に突っついて形を作るだけの工程ではありません。工具の特性を活かしきることで外注費を大きく削減し、かつ「図面をもらってから翌日納品」というような圧倒的な短納期対応で他社と差別化を図るための強力な武器になります。
「機械への負荷が心配」「公差に入るか不安」という町工場の技術者こそ、ぜひこのブローチングツールを試してみてください。
今ある機械で仕事の幅が広がりますので、会社や技術者として、一つの強みになるはずです。
